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TW4、サイキックハーツの諫早・伊織(d13509)のキャラブログ。仮プレだったりSSだったり。SSは少し暗め予定。 分からない人、TW、PBW、SHときいてピンとこない人は回れ右。
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2025/02/02 (Sun)                  [PR]
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2013/05/22 (Wed)                  偽りの仮面

 
 そこには 触れることのできない闇がある
  手を伸ばしても 空洞には決して触れられないように
   深く深く、どこまでも深く、光さえ届かぬような、暗然たる闇が ある

 闇がある 
  己の知らない鍵をかけ
   何ものも触れることはできぬとも
  それでも、そこに 
  
 闇がある 



           (伊織の中の闇
                    抱える闇は深く、果て無く)


(イメージが壊れる危険有
 閲覧要注意
2013.5.23更新)


 


 


 「・・・・・・・・」「・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
幾度となく寝返りをうち、それでも一向に訪れようとしない睡魔に苛立ちさえ覚えながら、伊織は起き上った。
学園に来て数か月。ようやく慣れてきた自室の寝台から起き上る。
闇になれた目には月明かりに照らされた室内は十分すぎるほどの明るさを保っていた。
「・・・はぁ・・・」
諦めたように立ち上がると古びた文机に移動する。
ここからなら、空がよく見える。
 空には綺麗な満月が昇り、照らされたステンドグラスの猫が、こちらを嘲う様に見下ろしている。
そっと、机の引き出しから、銀の片翼のモチーフのついたチョーカーを取り出し、
軽く握りしめた。

 「眠れないんですかー?」
 不意に幼子のような声がして、知らず祈るように閉じられていた瞳を開く。
トンっ、と重さを感じさせない動きで机の上に飛びあがった、漆黒の狐ー深宵ーは、
どこか心配するようにこちらを覗き込んできた。
 あの日、世界を初めて失った時から、変わらずにそばにいてくれる大事な家族。
「ん~、ちょっとな。心配せんでも平気やで」
 安心させるように撫でてやると、嬉しそうに喉を慣らし掌に頭を摺り寄せてきた。
 おとしものですよー、と渡され、反射的に手を出して受け取る。
 古びてところどころ擦り切れた守り袋だった。
思わず瞠目するも、すぐにいつものような笑顔に戻り、
わしゃわしゃ、とおおきに、と返しながら撫でてやる。

 中身は見なくても知っている。
肌身離さず持っていたつもりだったがいつのまにやら落としてしまってらしい。
 ふと、脳裏に先日の模擬試合で闇の中で見せられた後姿が脳裏をよぎり、
かき消すように強く瞳をつぶる。
強く、強く。

「なぁ、深宵、お願いがあるんよ」
 知らず言葉が口をついて溢れ出していた
「もし、オレがこれから先、何をしても、何を言っても」
「どんな人間になったとしてもーー」
「あんただけは、
 オレん味方でいてくれるか?」
 俯き髪に隠れた表情は見えず、
  己でも気づかぬほど僅かに震えた声で、祈るように問いかけた声は、

「?」
「はいー、もちろんでーす。」
意外なほどあっさりと、
まっすぐな心で紡がれた言葉と
手に触れたぬくもりによって肯定された。
「みよいはー
 いつでも、どこでも、いつまでも、
いさーの味方ですよー。」

「さよか

おおきに」





眠れない理由はわかっている。
深宵を部屋に残し、動きやすい黒の和装に身を包んだ伊織は、樹の上で目を閉じた。
日課である修練をいつものようにこなし、いつもとは違う、
  年に一度しか訪れないと決めた場所を訪れていた。
 眠れない理由はわかっている。
月明かりの下、胸中で呟いた。
脳裏に浮かぶのは幼いころの自分
 両親や共に孤児院で育った家族たちと笑いあう、まだ黒髪だったころの”自分”
  両親を心配させてやろう、とワザと遠回りしたあの日、
帰宅した己を待ち受けていた無数の見慣れた人たちの、
原型をなしていない躯と、むせ返るような血の匂い
   絶望で染まった白髪を、
逆に役に立つ、と引き取られた廓での、
手足に喰い込む冷たい鋼と纏わりつく香のかおり
    守りたい、と願い、
結局何もできず、ただ見ていることしか出来なかった無力な自分、

そしてあの人が最後に残した事の葉。

  「悪しき夢 幾たび見ても 身に負わじ」
そっと、戒めの様に呟く。
 忘れてもいいよ、そうあの人は言ったけれども・・・・・・

 忘れられるはずがない。
  いまだに白いままのこの髪がなによりの証拠だ。
自分は、いまだ何一つ、忘れることも、乗り越えることすらできていない。
 「ったく、ブザマなもんや」
 己を嘲るように呟くと、目を開き、伊織は月を見上げた。

家族を失ったとき、
幼く、無邪気に笑っていたあの頃。
その世界が壊れたときも同じような満月だった。

一度、挑む様に月を睨み、再び瞳を閉じる。
浮かび上がるのは、三度目の世界。
師匠に拾われて、ともに暮らした日々
 学園に来て得た、かけがえのない日々
  愛おしい者、ほっておけない者、時に言葉を、拳を交わし、共に笑って過ごした、
大切な”仲間”たち

いつか、再び”奴”と巡り合ったとき、”奴”を知ったとき、己はどうするのだろう

決まっている。
どんな手段を使っても、何を捨てても、行くのだろう。
 闇の道だろうと、なんだろうと。
たとえ、間違っている、と知っていても、”奴”を倒せるなら。
 脳裏に”仲間”たちの怒った顔、泣きそうな顔よぎり、ぽつりと謝罪の言葉がこぼれる。
「堪忍な。」
 あいつらはこんでえぇ
  闇に堕ちるんはオレだけでえぇ。
  あいつらには、光のあたる世界にいてほしい
       単なる己のわがままに過ぎない、と知りながらーー
  それでも己は行くのだろう。
   それで”奴”を殺せるのならーー

瞳を閉じれば思い起こされる無数の思い出。
そして
(いつでも、どこでも、いつまでも、いさーの味方ですよー。)
あの言葉と思い出だけで十分すぎるほどだ。
それだけで、オレは進める。


ふと、月から視線を離し、眼下に広がる朽ち果てた建物に視線を転じる。
 最初の世界が失われた場所。
  すべての始まりの場所。

何も還らぬと知りながら、単なる自己満足に過ぎないと知りながら
 また今年も同じように、訪れる。

    -悪しき夢 幾たび見ても 身に負わじー
 
「忘れんよ」
 決して、たとえどんなに辛くとも、それが傷つくだけだと知っていても
己に言い聞かせるように呟く。

 「オレは忘れんよ」

-悪しき夢 幾たび見ても 身に負わじー

「せやからー

オレんことは忘れてや」
そう、身勝手な願いと知りつつ、瞳を閉じて
そっと呟く。

また、夜が明ける。

だいじょうぶ。
自分はまだ、笑っていられるから。
”オレ”はまだ、”オレ”でいられるから。

「ほな、またな」
瞳を開き、立ち上がる。
先程までの憂いなどまるでなかったかの様に
いつものように飄々と。

道化師は笑う
仮面をつけて
その奥にある真実を
仮面の裏に忍ばせて

空に浮かぶ月と
 地に堕ちて哂う影だけが、
いつまでも、いつまでも
変わることなく 見つめていた。


勧君金屈巵 
満酌不須辞 
花發多雨風  
人生足別離

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