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TW4、サイキックハーツの諫早・伊織(d13509)のキャラブログ。仮プレだったりSSだったり。SSは少し暗め予定。 分からない人、TW、PBW、SHときいてピンとこない人は回れ右。
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2013/06/22 (Sat)                  暁光望みて

6月16日の試合観戦後
戦闘、流血描写あり

戦闘話を書きたかったんだが・・・。(背後談)


「さて」
 まるでちょっと近所のコンビニにでも行くかのような気楽さで、伊織はそう、呟いた。
眼前にそびえたつ建物。
名前を「世界救済タワー」
最近発見されたブレイズゲートの一つであり、中にはエクスブレインですら予測できないほどのダークネスがいるという。
 修練の一つとして、よく訪れてはいたが、一人で来るのは久しぶりだった。
しかも、視力は奪われ、家族でもある共に戦う存在を預けたままで。

 はっきり言って、そんな状態で来る場所ではない。
分かっていながらも、伊織は足を踏み入れる。
誰に聞いても言われるだろう。馬鹿か、と。死ぬ気か、と。

そんなつもりは毛頭ない。
 -こんなん、今更やー

うっすらとむしろ凄味すら感じさせる笑みを浮かべたまま、己の存在に気付き襲いかかる数多の気配に応じるように、笑みを深め、仕込み杖(ステッキ)を抜き放った。



「っ」
包帯男が振りかぶった刀を気配だけで察し、僅かな動きで躱す、と同時に抜き放った刃がその身体を切り裂く。次の瞬間、背後から迫る猫を模した異形の少女と鎌鼬の攻撃を切り倒した包帯男を足場に宙に舞うことで躱し、代わりに小太刀から湧き上った風が異形を切り刻み、その動きを永久にとめた。
「ふぅ」
迷宮を支配する悪魔を倒し、さらに下る事更に、数十階。
もともと視力に頼った戦い方はしていなかったが、さすがに今回は疲れた。

ここ数週間ほど、己の調子が悪いのは知っていた。
あの依頼から、ずっと・・・。
己の無力さを噛みしめ、それを表に出すことなく飄々とした仮面をかぶり・・・。
脳内に響く声は時を増すごとに大きく、うるさくなっていた。
そして、奪われた視界・・・。

(まぁ、それは今更なんやけどねぇ・・・)
初めて人を殺めたその日から、思い出した様にくる不調。
視覚、あるいは聴覚を塞ぎにくるもう一人の己に抗うすべを知らず、気付けばどちらにも頼らずにすます術を身に着けていた。
御蔭で、思考の淵に佇みながらもこの程度の相手ならば難なく相手取れるようになっていた。
流れるように仕込み杖と逆の手で持った小太刀を振るい、時に蹴りを混ぜ、相手を翻弄するように、舞うように。
その動きはまるで盲目、というハンデを感じさせなかった。
ザシュ!!
 もう何度目になるのか、襲いくる異形の獣を軽くバックステップを踏むことで躱し、呼び出した紅蓮の逆十字で刺し貫く。と、同時にその影から飛び出した鎌もつ獣の刃を右手の刃で受け止め、受け流しざまに胴体を深く切りつける。動かない相手には目もくれず、ただひたすらに迷宮の奥へと進んでいく。

何度目になるのか、扉を押し開けると同時に己に叩きつけられる殺気。
「・・・つまらんねぇ」
無意識に呟きが漏れる。
己はもっと鋭い殺気を知っている。もっと、研ぎ澄まされた、思わず身体が震え、それでも抗ってみたい、と思わせる、そんな殺気を。
それに比べ、こいつらのは生ぬるすぎる。
「つまらんわ、自分ら」
後ろ手に扉を閉めながら、挑発するように笑みを刻む。
「せやけど・・・まぁ、えぇわ。相手、したりますわ」


いくら慣れたとはいえ、小さな傷とはいえ、降り積もればいつかは大きな負担となる。
ましてや五感の一つを断たれ、いつも以上に神経を研ぎ澄まさねばならない状況であればなおさら。
余裕を装いながらも、伊織はさすがに身の内にたまる疲労を隠し切れずに軽く息を吐いた。
眼前には炎を宿した獣と鎌もつ獣、そして先程己に不意打ちをしかけ、脇腹に深手を負わせた巨大蜘蛛。
「・・・ったく。なまったもんや」
脇腹から溢れる鮮血はそのままに駆けだした。数ではこちらの方が圧倒的に不利なのだ。
であれば相手の攻撃を待って動くよりもこちらから攻めた方が早い。特に身体的にもさほど恵まれていない己ならば特にそうだ。ふと、脳裏に己に戦い方を教えてくれた師の言葉がよみがえる。本当に、いろいろなことを教えてくれた。戦う術も、”ヒト”として生きていく術も・・・。数え切れないほどの感謝を、照れくさくて素直に伝えたことはないが。・・・きっとそれすらもお見通しなのだろう。
(ったく、ほんまムカツクわ・・・)
思わず口元に戦場に似つかわしくない笑みが浮かんだ。
幸いにも速さではこちらが上。走りながら逆手に構えた小太刀から巻き上がる毒の嵐を腕を振ることで叩きつける。その風に相手がひるんだ隙をついて一番やっかいな炎虎の懐に飛び込んだ。虚を突かれたように振るわれた爪の一撃を太刀で受け止める、と同時に一瞬動きが止まった隙を逃さずに小太刀を顎下から頭頂部にむけて突き上げ,そのまま毒風を呼び起こし炎虎の頭部を吹き飛ばす。次の瞬間、足元から喰らいつかんと牙をむく大蜘蛛を気配を頼りに察し、後ろに飛び退りながら紅蓮の逆十字で地面に縫い付ける。
「同じ手が、なんども通用するとおもわんといてや」
炎虎の頭部を吹き飛ばした毒嵐を切り裂くように迫る刃を左右の太刀を交差することで受け止めながら、伊織は囁くように告げた。と、同時に僅かに身を引き、拮抗が崩れたため体制を崩した相手の無防備な脇を狙い影を纏った蹴りを叩き込む。そのまま、がれきに突っ込み、動かなくなる獣を気配だけで察し、伊織は深く息をついた。

「っ、はぁ」
己以外に動くものがない、と判断すると、手近ながれきに背を預けるようにずるずると座り込んだ。
周囲への警戒は怠らず、それでも僅かに緊張の糸が緩んだことで今まで抑えていたものがどっと溢れてくる。簡単に応急処置をし、周囲に敵の気配がないことを確認して伊織はそっと目を閉じた。
脳裏に響く笑い声を無視しながら、知らず、眉間にしわがよる。
己の様子がおかしいのは気付いていた。
あの依頼の後、目の前で堕ちた仲間を見てからずっと。
脳裏に響く声は煩さを増し、うまく己、というものが保てなくなっていくのを感じた。

夢の中で何度も思い出す。
何度も、何度も。
生きるために、己の居場所を守るために手にかけた無数の死体。
そして・・・己の手で殺した、大切な人・・・。

そして、学園での生活の中でも、痛感する己の無力さ。
悩んでいる、苦しんでいる、わかっているのに何もできない。
ただ、耳障りのよい言葉を吐いて、わかったようなふりをして、そうして最後の決断は相手にゆだね。
結局、脳裏でささやく声のように、己は、ただ自分がラクになりたいだけなのだ。
何もできてなどいないのだ。
ただ、できた気になっているだけで。そうやって、救った気になっているだけ、自己満足でしかないのだ、と。
本当の意味で、己は誰の助けにはなっていない。
誰にも、心を許していない。

だってそうだろう。
だってー『だって、イオリはいま、独りじゃない』

「っ!」
脳内でささやく声を打ち消すように背を預けていたがれきに拳を叩きつける。
そんな己の反応を楽しむように脳内でもう一人の自分がきゃらきゃらと哂う。

ふっ、と閉じていた瞳を開き、がれきに背を預けたまま、今は何もうつさぬ瞳で天井を見上げる。

(あぁ、・・・そうだ・・・)
「淋しい・・・な・・・」
ぽつり、と己でも意識せずにそう呟いていた。

そうだ、すっかり忘れていた・・・。
いや、忘れようとしていたのに・・・・。

独りは淋しいのだ。
だから人は誰かを求めるのだろう。

ずっと、独りだった。
だから平気だと思っていたのに。
深宵と出会い、師匠たちと出会い、そして多くの友、と呼べる相手と出会い・・・。

あぁ、いつの間に
こんなにも独りではないことになれてしまっていたのか・・・。
ふっ、と口元に笑みが浮かぶ。
そうだ・・・。
そうだった・・・・。
すっかり忘れていた。
ずっと独りで抱えてきたから、頼ることを知らずに、独りで歩んできたから・・・。
でも、
今は・・・

「帰らな、あかんね」

いつか離れてしまうとしても、
別れる時が来るとしても、

それでも、今は、独りではないから・・・。
待っていてくれる人がいるから、

なにより、自分がそばにいたい、そこに居たい、と思うから。

「帰らなあかんねぇ」

もう一度、そう呟くと、再び瞳を閉じた。
自分に何ができるのか、何がしてやれるのか。
まだ、わからないけれど、それでもそばにいてやりたいから。
悩んだり、迷ったりするのであれば、助けになりたい。
必要なら手を貸したい。
たとえ、それが独りよがりな願いだとしても。
誰かのために、を言い訳にしない。
それが己の望みなのだから。

幸せを願う。

例え、傍にいることができなくても。
それが自分のエゴにすぎないとしても。

それでも

幸せを願うから。
例え、遠く離れることがあっても
傍にいられなくとも
忘れ去られてしまったとしても

ずっと、ずっと、願っているから・・・。


ー帰ろうー
あの場所に。
抱える物は減ることはないし、傷はまだ癒えないけれど
それでも
あの場所に居たいから。

ーー帰ろうーー

どこか泣きたくなるような、切ないような、そんな気持ちを抱きながら、伊織はそっと意識を手放した。
少し休んで、そうしたら。
帰ろう。あの場所に。

いつか来る別れが、辛く、苦しいものだとしても。
それが傷を残すだけだとしても

それでも、

こうして巡り合えた事、共にある事、それは変わらぬ事実だから。
そして、今、己が幸せであること、それだけは揺るがぬ事実だから・・・。









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